どれだけ賛辞の言葉を聞いただろうか
バファローズびいきのテレビ中継で、元オリックスの解説者が『今シーズン二桁勝てる』と断言していた。
それだけではない。昨シーズンまでホークスに在籍し、リーグ屈指の左腕として君臨していた杉内俊哉・和田毅クラスになぞらえ、極めつけは『ダルビッシュの穴は埋まる』たしかにそう言い切っていた。
我々はそんな吉川光夫の投球を見て、どれだけ誇りに感じたことだろう...
初球は146キロのストレート。この球を見て『今日はイケる』と確信した。
序盤は球威のあるストレートを軸に、どんどん攻めていった。とにかく速い。
バッターが完全に振り遅れている。見ていてあまり打たれそうな気がしなかった。
しかし、球が速いのは昔から。成長したと感じたのはカウントを不利にしても、簡単には四球を出さなくなったことだ。
最終的にも7回を投げて四球はわずかに1つ。変化球でストライクを取れたのも、この日の強みだった。
相手の木佐貫洋も好投を展開。
味方打線の0更新が続き、試合中盤からは雨にもたたられた厳しい環境。
だからといって“熱投”とか“悲壮感漂う”とか、そんな感じは一切なかった。
投球の極意でも得たかのように、まるで聖人君子のような、終始落ち着きはらった吉川が表情を変えず、
黙々と腕を振り続けていた。
‥あれは1993年。
ファイターズ戦で完投勝利をあげた後だったか。マリーンズなどで活躍した伊良部秀輝氏が
『ピッチングのコツをつかんだ』
と発言していた試合があった。以後、最多勝を獲得するまでの投手に成長していった伊良部氏。
1993年といえば氏はプロ入り6年目にあたる。
吉川光夫も今年6年目だ。ひょっとしたら吉川もこの“コツ”をつかめたのではないだろうか。
速球派投手が長い歳月をかけて、ようやく会得することができる“ピッチングのコツ”。
ここでいう“コツ”がなんなのか、私のような凡人にはよくわからないが、
先発投手ならおそらく「勝てる投球」を指しているのだと思う。今季は安定した投球を続けながら、
なかなか勝ち星を手にすることができなかった。
この日は味方が援護してくれるまで相手に点を与えなかったのだから、自力で勝利を手繰り寄せたといっていい。
二桁勝つどころか、最多勝すら決して笑い話でもなくなりそうな、圧倒的な安定感。
たしかに吉川ならダルの穴を埋めてくれるかもしれない。
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